今回は、実際に「鹿児島県ドクターヘリ事後検証システム」を日常の業務の中でご活用頂いている、鹿児島市立病院 救急科科長・救命救急センター副センター長の髙間辰雄先生と、救急救命士の今村公俊様にお話をお伺いしました。

1. 限界だった「紙の郵送」と「オフラインでの記録業務」
── まず、鹿児島県のドクターヘリが抱えていた独自の課題について教えてください。
鹿児島県は南北約600kmと非常に広く、多数の離島を抱えています。そのため広域搬送のニーズが高く、令和6年度の要請件数は1,351件に上り、令和5年度の実績では全国第4位の規模を誇ります。「地域で完結できる症例は地元へ」という方針のため、基地病院だけでなく、県内のさまざまな医療機関や消防と連携する必要があります。
最大の課題は、事後検証のプロセスが完全にアナログだったことです。出動記録は手書きやExcelで作成し、消防や搬送先病院とのやり取りは電話やFAXばかり。検証作業のためだけに年間約45,000枚以上の紙を使用し、一次検証・幹事会検証のたびに100件以上の郵送作業が発生するなど、事務を担当するクラークには多大な負荷がかかっていました。

── 現場の医師や看護師の皆様にとってはいかがでしたか?
現場の負担も深刻でした。当院ではヘリ格納庫など、院内ネットワークから離れた場所で待機することも多いのですが、そうした「オフライン環境」では電子システムに入力できません。そのため、現場で手書きのメモを残し、病院に戻ってからシステムに入力し直すという二度手間が発生し、残業の温床になってしまっていました。
2. 厳格な要件をクリアし、「現場の使いやすさ」も両立したTXP Medical
── そのような状況から、TXP Medicalのシステムを選ばれた決め手は何だったのでしょうか?
単なる記録システムではなく、消防から搬送先病院まで「多職種がアクセスできるプラットフォーム」であることが大前提でした。 また、外部機関を巻き込むため、当院のシステム部門からは「医療情報システムの3省2ガイドラインに準拠したセキュアな環境」や、「利用権限の細かな設定」といった厳格な要件が求められました。TXP Medicalのシステムはこれらをクリアした上で、フライトレコードから検証記録、インシデント報告まで必要な機能をすべて一元管理できる設計だったのです。
何より、現場や機内からタブレットで「オフライン入力」ができ、通信環境が回復すると自動同期される機能は、私たちの課題に直結する素晴らしい解決策でした。
3. 記録時間を「半分以下」に削減。働き方改革が前進
── 導入後、現場にはどのような変化がありましたか?
劇的な変化がありました。まず、完全ペーパーレス化により、事後検証のために4名体制で行っていたクラーク業務を1.5名に集約できました。全国の基地病院が苦労している「日本航空医療学会へのレジストリ登録(JSAS-R)」のデータ連携もシステム経由でスムーズになり、クラークの総業務量は約65%も削減されています。
また、出動時から事後検証までが一元化されたことで、1件あたり約93.5分かかっていた記録作業が、速報値で約41分へと半減しました。 フライトナースからも「場所を問わずアプリで記録できるため、以前より約30分早く帰れるようになった」と喜びの声が上がっています。
4. 地域医療の質を高める「広域救急DX」へ
── 病院内だけでなく、地域の消防機関にも良い影響が出ていると伺いました。
はい。消防側にとってもデータの一括提出が不要になり、リアルタイムに近い形で情報共有ができるようになりました。システム上で自らの活動に対するフィードバックをタイムリーに確認できるため、救急隊の教育効果やモチベーション向上にも繋がっています。
── 最後に、今後の展望をお聞かせください。
今後はこのシステムを、ドクターヘリだけでなく「鹿児島市ドクターカー」へも展開していく予定です。蓄積されたデータをフル活用することで、より安全な運航と、地域全体の救急医療の質向上を目指していきたいと考えています。


